ジロ・デ・イタリア第19ステージ
レースの感想とか書くと、とりとめなくなってしまうので、普段はわりと大人しく見ているのだけれど、
いやー昨日のジロは凄かった。
方々でも書かれていると思うけれど、残り80kmを残してエースの一人逃げ。そしてそのままゴールまで走り抜けてステージを取ってしまう。
こんなレース、見たことない。自分の中のサイクルロードレースの常識が昨日、書き換えられた気がした。
こんな漫画のような展開が本当に起こるなんて。
いろんな方が言っているけれど、昨日の第19ステージは本当に歴史に残る伝説のレースだったと思う。
フルームというのはやっぱり自分の中で気になる選手だ。
ただ彼の自伝の感想でも書いたけれど、彼の純粋なファンかというとそうでもなくて、むしろどこか好きになりきれないところもあって、フルームの牙城を脅かす選手が出てくるとむしろそっちを応援してしまうという… そんなスタンスだった。
でも今回ジロを観ていてわかったのは、フルームの調子が悪いと僕はフルームを応援したくなる、ということだった。どうもフルームにはやっぱり強いフルームでいてもらいたいらしい。まったく勝手なものだ。
今回は序盤でフルームが精彩を欠き、まったく存在感を失っていたので、そうすると自分の中で沸々と彼に対する愛みたいなものが出てくるのを確認したのだった。
そしてゾンコランでのあの勝利。それでもあれは、悪コンディションの中で見せた意地の一発のようなもので、やはりイェーツの優勝は揺るがないのではないかと思っていた中での、昨日の圧巻の逃げ。
まるで全身の肉を燃焼しつくすかのような、80kmの単独疾走。
あんなものをを見せられたら、複雑な感情もどこかにすっと飛んでしまう。単純に、その肉体のエンデュランスに感動し、ひれ伏すしかない。
チマコッピの未舗装路で独走に入った、というのもよかった。
悪路でチェーンがバインバイン揺れている映像を見て解説陣が心配していたけれど、彼がアフリカのどんな道を走っていたのかを本で読んでいたので、むしろこの道は彼にとってよく知っている道のはずだ、と思っていた。
実際、未舗装路を走るフルームは生き生きとしていた。彼はひょっとしたらアフリカの少年時代を思い出しているのかもしれない… そんな風に思っていたら、レース直後のインタビューで彼はまさにアフリカを思い出したと語っていた。その言葉が、なにかとても嬉しかった。僕は彼のアフリカ時代のエピソードがとても好きだ。あのアフリカ時代にクリス・フルームという人の良心が集まっていると思っている。
そして歴史的な逃げでステージに勝利しただけでなく、彼はなんとマリアローザまで獲得してしまった。これ以上のシナリオは、漫画でも描けないだろう。
波乱万丈のジロもあと2ステージ。フルームのグランツール3連覇なるのか。それとも…
これだからサイクルロードレースはやめられない。